2017年5月31日(水)地域連携フォーラム 講演・研修会
欠けているところに目がいく能力
私たちは不足に対して敏感に反応するという習性があります。
人類は不足や欠点をすばやく察知して補うことで生存してきたので欠点に注目する機能というのは進化の過程で獲得した才能なのです。
さて、この機能は子どもを育てるという面においても日常的に発揮されています。
子どもの欠点は私たちおとなの目に止まりやすく指摘したくなるのが親心。
だから、子どもたちは「これがダメ」「あれもできていない」と日常的に指摘されながら育ちます。
実際、子ども時代はできないことが多いし失敗もします。
成長してほしい周囲のおとなの期待から欠点をなおそうと否定的な言葉がけとなりやすいのです。
そうすると、子どもは「自分はダメだ」「できない子だ」と思い込んで萎縮し自己肯定感が低くなります。
心理学実験からは欠点をいくら指摘しても効果は薄いとされています。
コーチングでは「できたこと」「上手くいっていること」に目を向けます。
身近な人から肯定的に認められることによって子どもは自信をもつことができるのでやる気が出ます。
良かれと思って欠点をせっせと指摘していたという方へ
- 逆効果になっていたかもしれません。
- 子どものやる気を削いでいたかもしれません。
整然としたモノに美しさと安定を感じる習性
さらに、私たちの脳は同じものが整列していたり左右対称だったり整然としているモノを美しく魅力的だと感じるようにできています。
たとえば、同じ花が一面に植えられた花壇や左右対称の庭。
整理整頓された本棚やショーケースに並ぶグラス。
箱詰めされ形の整ったフルーツに美味しさを感じます。
もし、その中に虫喰いや変色したフルーツがあればすぐに見つけて取りだしたくなります。
団体行動を乱すような子どもや勝手な振る舞いみんなとちがう外見や服装をした子を見ると私たちおとなは不快と感じて不安になり正そうとします。
しかし、コーチング的な捉え方をすればこれは個性です。
有無も言わさず強制的に同じにするよりも違いを認識させて修正する方法を一緒に考える方が信頼関係を壊さずに建設的な関係を築くことができます。
子どもの成長を左右する思考と言葉
言葉の力は絶大です。
日本では昔から「言霊」と言われています。
肯定的な言葉は肯定的な気持ちを生み、否定的な言葉は否定的な気持ちを生みます。
子どもの健やかな成長を促すために私たちおとなは子どもと敵対関係にならないように注意しなくてはなりません。
おとなは子どもたちの応援団です。
子どもの教育と称して否定語をぶつけたり子どもだからと見下した言い方していませんか。
応援者は相手を否定したり見下したりしません。
信頼関係を築き成長を応援する関わりをもつために前述した私たちの脳に備わった能力のことを知っておくこと。
その上で肯定的な言葉がけを心がけることが重要です。
たとえば、
A:「遅れるなよ」
B:「間に合うようにしよう」
言いたいことは同じですが言い方がちがいます。
AとBどちらが行動を促すために効果的でしょう。
否定語はインパクトがあります。
瞬間的な効果が見込めそうです。
しかし、相手の気持ちを不快にします。
脳は不快な言葉に抵抗しようとします。
肯定的な言葉は抵抗なくすっと入るので行動に結びつきやすいのです。